ひょう被害生産者インタビューVol.2

樹と人材を育て、福島の農業を次世代へつなぎたい

フルーツランド たかはし果樹園 園主 高橋賢一さん

フルーツランド たかはし果樹園 園主 高橋賢一さん

福島市笹谷にある「フルーツランド たかはし果樹園」は家族経営の果樹園。全体で3haある農園で、桃、梨、りんごを育てています。園主の賢一さんと奥様のかつみさんを中心に、収穫期には4~5人のパートさんと共に運営をしています。

収穫を終えた桃畑

「私の農園の特徴は、主力商品である桃の品種が多いことです」と話す高橋さん。20品種の桃を育てており、7月~10月中旬頃まで長く桃を楽しむことができます。

美味しい果物づくりとは、健全な樹をつくること

ひとつひとつ、果実の状態をチェックしていく

おいしい果物を作るためには、健全な土、根っこ、葉をつくり、健全な樹に育てる。そして太陽の光をたっぷり浴びさせます。樹の力を最大限に活かす地道な手入れをした結果、美味しい果物が実るのです。高橋さんはあえて特別なことはせず、淡々と土づくりに向き合っています。

高橋さんの農業は、「果物の樹がもつ本来の力を発揮できるように手を貸している」というスタイル。余分な枝葉の剪定をしたり、自然災害への対策をしたり、肥料や農薬を使ったりして、ある程度生育を制御しながら、果樹がもつ自然の力と、農家による手入れのバランスを大事にしています

自然災害は対策をしても完全には避けられない

ひょう被害を受けた桃

2022年6月上旬に福島市にひょうが降ったことで、高橋さんの果樹園でもりんごが5割ほど、桃と梨は3~4割ほどの果実に傷がつきました。降ひょう後の摘果作業の際に、傷がないものや傷が少ないものを樹に残しましたが、それでも傷の残ってしまった果実は規格外品として販売しています。
「農家としてできる限りの対策をした結果です。自然災害は完全に避けることはできません。消費者の皆さんにも理解してもらいたいと思っています」と高橋さん。

理解あるお客様に支えられてきた

収穫期を迎えている「豊水」

高橋さんの果樹園では2011年の東日本大震災後、放射能の風評被害で売り上げがガクンと落ちたそう。昔からのお客様には安全性を説明し、理解してもらえたことで、約3年で売り上げが震災前と同程度まで回復しました。
その当時からのお客様は、ひょう害や霜で果物が被害を受けても、

「ひょうが降って傷がついてかわいそう」
「規格外なら安く買いたい」

ではなく、

「ひょうが降ったんだね。自然相手だからしょうがないよね」
「表面が傷ついてるだけで変わらず美味しいね」

そんな言葉をかけてくれて、「農業には良い時も悪い時もあること」を理解してくれているそう。
高橋さんは「私の育てた果物はそういうお客様に支えられてきましたし、これからもそういうお客様に食べてほしいです」と話します。

消費者のみなさんにも農業への理解を深めてほしい

丁寧に梨を果実を収穫していく

消費者の皆さんには、見た目だけの「規格」にこだわらず、福島の果物の「質」に目を向けてもらいたいと高橋さんは考えています。
「果物の価値は、味や食感、香りなど、“規格”という見た目だけで判断できません。自然の中で果物を栽培すれば、必ず規格外のものがでてきます。農業とは本来そういうもので、見た目が良いものもあれば、悪いものもあるのです。そういうものだと理解してくださる方が増えれば、福島の果物のブランド力も上がっていき、福島全体の農産物の価値の底上げにもつながるはずです」

気候変動には「設備」と「技術向上」で対応していきたい

近年の気候変動について高橋さんは、「温暖化と極端な天候の変化にはできる限りの対応をしていきたい。そのためにできることは 『設備投資』と『技術の向上』の二つです」と語ります。
「『設備投資』については、防風ネット※ や防霜ファン※ 、潅水(かんすい)設備※ など、国や自治体の助成金を利用しながら、可能な範囲で導入しています。高額になることも多いため、今後も優先順位を決めて投資をしていく予定です。『技術の向上』は言葉の通り、農業の知識や経験を積み重ねて、質の高い果物の安定的な生産を目指します。これからの農業では、設備投資と技術の向上の両方が必要です」

※防風ネット…樹に風が当たって病気が広がるのを防ぐ
※防霜ファン…霜がおりる時期に畑が低温になるのを防ぐ
※潅水設備…水が不足しているときに自動で畑に水をやる設備

自分の工夫や判断次第で経営が良くも悪くもなる

農業は、経済的な尺度もやりがいとして大きいと高橋さんはいいます。農園の面積からどのくらいの品質の果物がどれだけ獲れるか、収穫量から単価や売り上げを予測して、経営方針を決めています。
「経営の結果は良い年も悪い年もあります。自然災害や病気などのリスクを考えれば完全にコントロールはできませんが、それもやりがいですよね。お客様に『美味しい!』と言って食べてもらえた時に『今年はうまくいったな!』と強く実感しますね」と高橋さんは笑顔を見せます。

福島の果物の美味しさを次世代につないでいきたい

高橋さんは福島の果物の美味しさを次世代につなげていくこと、ひいては福島の農業が持続していくことが大事だと考えます。
「そのためには、環境に配慮した農場づくり、健全な樹の育成、就農人材の育成はもちろんですが、なによりも『福島の美味しい果物に対して理解をしてくれている消費者のみなさん』の存在が必要不可欠です」と期待を込めます。